情報テクノロジーが切り開く、民主的で公平な銀行の可能性。


著名な宇宙物理学者、フリーマン・ダイソン氏を父に持つ、科学史家のジョージ・ダイソン氏。
マリワナのトラブルで、16歳で家出しカナダのブリティッシュ・コロンビア州のベルカラの海岸に住み着き、そこで自給自足しながら、現代的材料を使って美しい伝統的なカヤックを手作りしていたことで有名です。
そんなダイソン氏が、Google規模の情報テクノロジーサービスと、本来あるべき銀行の姿について語っているインタヴュー映像がありました。
ソーシャルメディアなどに目を奪われがちですが、情報テクノロジーが本当はどういうもので、どこに向かおうとしているのか。
とても洞察に溢れた内容です。


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What google did which was so brilliant is just digitize everything.
And google very, has very, friends and some of the people like nothing against what they're doing, but they've accumulated all the data in the world, all the information.
Digitize all the books, absolutely everything whatever it is.
グーグルのすごいところは、すべてをデジタル化したことだ。
そしてそのことに対して、特に誰も口を挟んでこなかったが、
実際のところ彼らは、世界中のあらゆるデータ・情報を蓄積していた。
本や、とにかくなにもかもデジタル化していたんだ。

But that has no meaning.
It's not any use.
It's easy to get all those answers, it's very hard to get the questions, to think of the questions.
What they did which is so clever, they relating us as questions.
Every time you search for something in google, you are asking a question.
And you get back this long list, and essentially then google is asking "Is this the answer?"
And you know, you click, wherever people click, leaves a trail. "Yeah, this is, this is the answer to this question."
So they're connecting, they'er creating a map between the questions and answers. That's where the meaning is.
でもそれだけじゃ意味にはならない。
それでは使い様がないんだ。
答えをすべて集めるのは簡単だが、質問のほうはずっと難しい。
彼らが賢かったのは、私達を質問として関連づけたことだ。
誰かがグーグルで検索する度に、それは質問を投げかけていることになる。
そうすると長いリストが返ってくる。つまりグーグルが、
「答えはこれですか?」
と聞き返しているわけだ。
クリックされれば、それは軌跡となって、
「そうそう、この質問の答えはこれだ」
と、質問と答えの間に地図を形成していることになる。そしてそこにはじめて意味が生まれるんだ。

They're very much playing Monte Carlo with everything we're doing.
So get this statistical approximation to what the, you know what all the minds and the, you know on the planet are thiking.
So it's.. very, very and working really well.
つまり彼らは、私達の動向ををカードにしてモンテカルロをプレイしていたんだ。
そうやって様々な思考、この惑星上で考えられていることの統計的近似値を導き出している。
そして、それはとても… うまくいっている

Money, currencies just is data.
To have a currency requires two things really (or three).
It requires storage of information and trust.
That's really what money is.

And we trust google now with everything.
They have all my email, you know they have all your videos, we freely, it's almost trust google more than we trust anything else.
Probably more than we trust most governments right now.
お金、通貨とはつまりデータに過ぎない。
通貨に必要な要素は、実は2つだけだ。
情報の保管と信用。
お金とはつまりそれだけのことだ。

そして私たちはグーグルを全面的に信頼している。
グーグルは僕のメールを全部持っているし、それに個人的な動画も、なんの疑いも挟まずに何よりもグーグルを信用していると言っていい。
おそらく今やほとんどの政府より信用されているだろう。

We trust PayPal and a lot of money moves through that. But not, but it's, you know it hasn't scale to the extent of the google scale.
私たちはペイパルも信用している。そしてたくさんのお金がペイパルを通して動いている。でもそれはまだ、グーグルの規模には達していない。

The problem with financial data is that it's regulated.
And google is very shy, really worried of being regulated.
They don't, they don't want to get into that.
But I think ultimately they will.
金融データがやっかいなのは、なにかと規制されているからだ。
そしてグーグルは規制されることをとても恐れている。
だからまだこの分野には参入していない。
しかし最終的には参入するだろう。

Tomorrow we could open up a newspaper and find out that google had bought PayPal. And then that would be a very strong, you know something like that would be a strong start.
例えば明日新聞を開くとそこに、グーグルがペイパルを買収したという記事があったとしたら、それはとても強い、力強い始まりになるだろう。

A lot of problems are coming from banks.
We thought we trusted banks, it turns out that you know they were doing all those fraudulent mortgages and just about everything you can imagine that could possibly would be bad is being done by banks.
Why are we still tolerating it.
Why don't we start some fresh system that's much more open and fair.
It would be very good thing and popular.
And I would like to know where my money is.
If I put 100 dollars in my bank, I have no idea where it is.
I mean, yet in this age of information, you know, google knows where every single email I ever wrote, every word they know where that is. And it could be same with money.
You can put a thousand dollars in the bank and know that's in the foundations of the bridge in Chicago or something that's where my money is.
多くの問題は銀行に起因している。
今まで銀行を信頼してきたけど、彼らはずっと詐欺的な抵当貸付や考え得る限りのありとあらゆる悪さをしてきた。
このまま銀行を黙認するより、新しくオープンで公平なシステムを始めたほうがいい。
そのほうがずっと良いし、賛同も得られるだろう。
僕は自分のお金がどこに行くのか把握していたいんだ。
今、銀行に百ドル預けたら、それがどこにいくかなんておおよそ検討もつかない。
これほどの情報時代にもなって、例えばグーグルは、僕のメールがどこに届いたか、どの単語がどこに行ったかですらも把握しているというのに、お金でもできるはずだ。
銀行に預けた千ドルが、シカゴの橋の基礎に使われていることがわかるとかね。

The world is completely ready for this.
If somebody like that to step in and create the banking system that is closer to the way banking was in visions at the beginning, which was a safe place, trusted place to put your money so that other people could use it.
Now we are finding the money in a bank is just go disappeard and nobody is able to use it.
世界のほうはとっくに準備ができている。
あとは誰かが一歩踏み込んで、銀行が本来果たすべきだったシステムを構築するだけだ。
安全で信頼できて、必要な人が使えるようにお金を預けられるシステムを。
今の銀行システムではお金はどこかへ消えてしまって、誰も使うことができなくなってしまう。

すっかり流行語になってしまったエコロジーの“エコ”は、エコノミーの“エコ”でもあります。そして世界が抱える問題の多くは社会経済の仕組み、ソシオエコノミーに起因しています。
しかし私たちはそのシステムの媒体である通貨について、実はほとんど何も知りません。まるで教育からそこだけすっぽり抜け落ちていたかのように。通貨とは何か、まともに説明できる経済学者すらいないのが現状です。
そのうえ、この明確に定義もできていない媒体を扱う銀行のシステムはといえば、とても現代のものとは思えないような代物です。
なぜ社会はこれらを変えようとしないのでしょうか?
私たちが本当に必要なのは、今の銀行でも、通貨自体でもないのです。
近いうちにいわゆるお金というものは姿を消し、完全に情報に替わられるかもしれません。そうなれば、金利や貯蓄、投資なども、本来のあるべき姿を取り戻せるでしょうか。
少なくとも今のままでは埒があかないのは間違いありません。

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ジョージ・ダイソン氏の制作したソフトシェル・カヤックは、アリュート人のバイダルカを、廃棄されたアルミチューブや厚手のナイロン(工業用掃除機のフィルタ)で再現したものです。




ジョージ・ダイソン氏の著した本、バイダルカ。
写真だけではなく、巻末に簡単な設計図も添付されています。

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こちらは、ダイソン氏が1972年に徴兵拒否のヒッピーたちいっしょに作った6人乗りの巨大バイダルカ、マウント・フェアウェザー号。









この怪物カヤック制作の顛末は、宇宙船とカヌーという本に詳しく記載されています。
またこの本は、ダイソン氏の経済に対する鋭い洞察を感じさせる、一切通貨の関わらない、無人島での“じゃがいも経済学”についてもページを割いています。


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友人が時折彼のアトリエを訪れて、カヤックの部品を買っているのですが、最近の著作活動について、
「前に出版したとき、ちょうど9月11日の同時多発テロと重なってしまって」
と苦笑いされていたそうです。
それがこの本です。ダイソン氏の父親、フリーマン・ダイソン氏が携わっていた、核爆発推進方式の巨大宇宙船、オリオン・プロジェクトについて書かれていてます。

マリオットホテルより大きいこの宇宙船に家族を乗せて木星に行く計画は、決して冗談ではなくて、米空軍にスポンサーされた、“本気”なプロジェクトだったのだそうです…


2012/01/23 by Tate Slow
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