1910年、ペルー人飛行家ホルヘ・チャベス氏は、たった30馬力あまりのフランスの単発単葉機ブレリオ XI号機を駆って標高2008メートルのシンプロン峠に挑み、初のアルプス横断飛行に成功しました。
それから99年目にあたる今年、太陽のエネルギーだけで飛ぶソーラー・モーターグライダーが、ついにこの偉業を成し遂げました。
エリック・レイモンド氏は、以前紹介した自作の愛機、Sunseekerを改良したSunseeker IIで挑んだ冒険について、以下のように語っています。
今まででいちばん難しい挑戦だったけど、最高に景色のきれいなフライトだった。天候は曇りだったけど、雲の上まで高度を上げて、ソーラーパワーに切り替えたら、最終的に13,700フィート(およそ4,176メートル)まで上昇できたんだ。雲の上に突き出たマッターホルンとモン・ブランの山頂は素晴らしい眺めだったよ。
でもイタリアの方角にはぶ厚い雲の壁が立ち塞がっていて、最初はその上を越えてトリノに向かおうとしたんだけど、そびえ立つ積乱雲を縫って飛ぶしかなくなってしまった。大きな雪片が降ってるのに気づいたときはまだ晴天だったんだけど、それがトラブルの最初の兆候さ…上昇する積乱雲に捕らわれて逃げ道を塞がれてしまったんだ。
フルパワーで上昇したけど、雲のスピードには到底追いつかないし、太陽が照っているというのに猛吹雪なんだぜ。四方から迫ってくる積乱雲の間を必死に飛んでたら、雲間に小さく地面がのぞいているのを発見したんだ。雪原と樹が見えのさ。急いでモーターを切ってからエアブレーキを使って7000フィート旋回降下して雲の下まで出たよ。
雪嵐の写真も撮りたかったんだけど、操縦桿から手が離すことなんてとても無理だったね。実のところ、視界を遮る吹雪で絶望的な気分で飛びながら、雪嵐が地上まで届いていないのが見えたときにはちょっとホッとしたよ。同行のグライダーとパラグライダーもいたので寂しいってことは無かったけど。
ただこの嵐のせいで、早々にアルプスを離れてイタリアのだだっ広い平原を飛ぶはめになってしまった。トリノまでのフライトは永遠にも感じられたけど、実際には全フライトで5時間半もかかかっていなかったんだよね。
テレビのクルーが待ち構えてて、その晩ホテルで自分たちのニュースをテレビで見たよ、今回のホスト、ワールド・エア・ゲーム2009の主催者達とのディナー前にね。
僕らはこれからこのままイタリアを南下して、シシリーに向かう予定なんだ
Photo: SolarFlight
Source: TreeHugger
こちらはブレリオXI号機。
Photo: WIKIMEDIA COMMONS