低く座る前輪駆動リカンベント、
パイソン・ローレーサー。

前輪駆動リカンベント パイソン・ロードレーサー

最近都内でも時々見かけるようになりましたが、リカンベントと呼ばれる仰向けになって操縦するタイプの自転車があります。一般の自転車とあまりに違う乗車姿勢のため、新奇なものと思われがちですが、歴史は古く、そもそも自転車が考案された当初からあったデザインで、環境意識の高まりとともに、主にヨーロッパを中心に愛好者が増えてきました。実際に乗車してみるとバックレストによりかかったままの姿勢は思いのほか楽で、しかも体重以上の脚力をペダルにかけられ、空気抵抗も少ないので、かなり高速で進むことができます。

ただ2輪のリカンベントの場合、車体前部にあるペダルから駆動する後輪までの距離が長く、駆動力のロスがあるのと、ステアリングがペダルや脚に干渉しやすいため、操縦性が犠牲になったり、車高が低くできないなどの欠点がありました。

前輪駆動のリカンベントも数々つくられましたが、ステアする車輪に駆動力をねじりつつ伝える構造の複雑さなどから普及しませんでした。そんな前輪駆動のリカンベントのなかでも異彩をはなっているのが、Flevobikeという、操縦者の腰から下も、ステアリングに応じて廻してしまおうというコンセプトの自転車です。

Flevobike
Flevobike

自転車というのは通常直進性を保つため、ステアリングの軸の延長戦が地面と接する点を、車輪の接地点より前に置く(スーパーのカートの車輪と同じ理屈で、進むと自動的に直進しようとする)ポジティブ・トレールという構造になっているのですが、Flevobikeも例にもれず、この構造となっています。ただ問題だったのは、腰をひねってステアする構造のため、ステアリング軸の延長線上に腰の軸も設定せねばならず、軸が地面に水平になりすぎてしまって大変不安定なことでした。

長年Flevobikeの愛用者だったJürgen Mages氏が、ポジティブ・トレールで直進性を得る代わりに、ステアリング軸を特定の角度に設定することで、自身の体重を使った静的センタリングをするというコンセプトを思いつき、自作したのが前輪駆動センターステアリング方式のパイソン・ローレーサーです。

パイソン・ローレーサー
停車時に手で支えられるほど低い。ステアリング軸を延長すると、上は股関節に、下は前輪の接地点より相当手前の、ネガティブ・トレールであることがわかります。

パイソン・ローレーサー
いろんな中古パーツを寄せ集めて作られたパイソン。オフィシャル・サイト(英語)には自作のための詳しい解説があります。

自作の小径パイソンで田舎道を駆け抜ける映像。


腰でステアリングできますから、手放し運転も可能です。


自分でもつい設計したくなります。

2009/04/15 by Tate Slow
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