なるべく自然の材料をつかって環境負荷の低い家を建てたいと思っても、専門の大工さんがいるわけでもないし、建築方が確立されているわけでもないしで、実際に建てた人から教わって自分で建てるくらいしか方法が無いのですが、そんな人のためでしょうか、ウェールズに住むSimon Dale氏は、自作した草屋根の“Low Impact”な家の建て方をウェブサイトで公開しています。
友達や訪れた人達にも助けてもらい、義理のお父さんと一緒に、およそ4ヶ月かけて完成させたこの家は、既成の、利益重視で箱型デザインのつまらない家では味わえない楽しみがあるとか。ナチュラルな材料を使い、環境に最大限配慮して建てた家はとても居心地が良く、“発癌性物質のカクテル”でいっぱいの近代のビルと違って、自然の息遣いを直に感じながら暮らすことができるのだそうです。
掛かった延べ時間は1000~1500時間、費用は3000ポンドほどで、平米当り60ポンドくらいですから、家の建築費用としては格安です。人件費はかかっていません。
以下のポイントに留意して建築したそうです:
- 景観を壊さないよう、丘の傾斜地を掘って建築する。
- 掘った土や石は、土留壁や基礎に利用する。
- フレームは、近隣の森林で出た間伐材を使う。
- 構造的にも見た目にも良く簡単な、捻りを加えた放射状の垂木(RECIPROCAL ROOF)構造を採用する。
- 床、壁、屋根には干し藁(ストローベイル)を使い、断熱性を確保する。
- 環境と作業の簡略化のため、草屋根にする。
- 壁には、セメントに比べ生産時のエネルギー消費が少なく、呼吸をする素材の漆喰を使う。
- 床材や内装材には廃材木を使う。
- 窓やレンジ、水道周りや電線など、必要なものはたいがいゴミの中から拾える。
- 暖房には、燃料が手に入りやすいウッド・ストーブ。
- 煙突は石をかためた塊でつくり、保温性を高め、放熱を遅くする。
- 冷蔵庫には地下を通して冷やした空気を使う。
- 天窓をつくる。
- 灯り、音楽、コンピュータ用の電力はソーラーパネルで。
- 水は近所の泉から重力を使って取り込む。
- コンポスト・トイレ。
- 池や植物用の雨水貯水。
設計図らしきものは、この2枚のスケッチだけです。
側面図
平面図
作業手順のごく簡単な説明がありましたので、日本語訳をつけてみました。
建築前の更地。
傾斜地を掘って平坦地にしてから乾いた石で基礎をしっかりかため、家の前になる土手には土塁壁をつくる。
30かそこいらの小木を組み上げて、ぐらぐらしなくなるまで釘で固定し、チェンソーで形を整える。
垂木(たるき)に丸太の桁を打ち、床には小板を敷く。樹は寝室フロアを固定する支柱にする予定。床の小板は保温用の干し藁(わら)を上に敷き詰めるため。
藁(わら)が届く。コットンのシートと干し藁(ストローベイル)を屋根にかぶせてプラスティックの防水シートで覆い、残りの干し藁は雨が降る前にいそいで中に。
干し藁(ストローベイル)の壁づくりは楽しくて簡単な室内作業。乾いた石でおおまかに作った土台に干し藁を積んで、ハシバミの棒で固定していく。残った干し藁を床に敷き詰めたら、床材を張る準備は完了。
壁の穴に窓をはめて、隙間があったら藁を詰め込む。ストローベイルの壁は、コーナーをチェーンソーでスムーズにトリムしてかわいらしいカーブにする。
朝4時半、作業台の前にたたずむ義理の父。外は雪、扉無し、壁の漆喰工事もまだ途中。
春。泥を屋根に載せ終わり、植物を植える準備は完了。漆喰工事は仕上げ塗りまで済んで、庭づくりもいい具合に進んでいる。ビールは発酵してるし、パンはオーブンの中だ。
藁と間伐材でもこれだけ居心地が良さそうで、おそらくは頑丈な家が建てられます。レンガに始まった量産文明に頼らない、という意味では、「三匹の子豚」もそろそろ書き直ししなくてはならない時期なのかもしれません。
詳しい説明は、A Low Impact Woodland Homeで。