ロケットから往復便へ。スペースシャトル最後の滑空。

スペースシャトル・アトランティス号 最後の帰還
Photo: NASA

2011年7月21日午前5時57分(EST)、最後のミッションを終えたスペースシャトル・アトランティス号が無事帰還しました。30年、135回におよんだフライトミッションのトリをかざる夜明け前の着陸の様子をNASAをが公開しています。この着陸風景こそ、スペースシャトルが従来のロケットと大きく違っていた点なのです。

30年間、地球と宇宙をつなぐシャトルとして活躍してきた機体は、チャレンジャー号、コロンビア号、ディスカバリー号、アトランティス号、エンデバー号の5機。うち、チャレンジャー号とコロンビア号は、残念ながら事故で失われています。

スペースシャトル・アトランティス号 最後の帰還

スペースシャトル・アトランティス号 最後の帰還

スペースシャトル・アトランティス号 最後の帰還
Photo: International Business News via Reuters

今となってはもう見慣れてしまいましたが、大気圏突入と滑空を両立しているシャトルの独特な形状は、リフティングボディという、翼の代わりに胴体で揚力を発生するというコンセプトをベースに開発されたものです。ところが当初、理論的に多くの利点が認められていたにもかかわらずあまりに奇妙で、実際に飛行可能なものだと認識することができなかったNASA幹部は、“飛ぶわけがない”と、なかなか飛行実験を許可しようとしませんでした。

当時NASAの飛行実験の技術者だったデール・リード博士は、幹部を説得するには実際に飛んでいるところを見せるしかないと考え、自作のスケールモデルをラジコンの母船に取り付け、裏庭の上空から滑空させているところを奥さんに撮影してもらいました。そして上司にそのホームムービーを見せることでやっと、飛行実験の許可をもらったのです。

しかし予算は微々たるもので、しかたなく博士は、飛行機の自作が趣味の職員でチームを組織し、スチールのフレームとマホガニーでこつこつと手作りした実物大のグライダーを、改造したポンティアックで引っ張って、初飛行を成功させています。そしてこの成功が、その後のNASAのスペースシャトル計画を大きく進展させたのです。


Photo: NASA

ブレークスルーの多くは、大勢が冷笑するの中、諦めない一握りの無名で無謀な作業着を着た人たちの手によって、バックヤードで生まれてきます。

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一度きりしか使えない“ロケット”から何度も地球と宇宙を行き来できる“往復便”へ。スペースシャトルが映画や文化などに与えた影響も非常に大きいものでした。あのジェームズ・ボンドも乗っています。
『007 ムーンレイカー』のラストシーンは、クラッシックのボンドシリーズらしさが贅沢につまった、名シーンでした。

大画面でシャトルの様子をモニターしながら

Sir Frederick Gray: My God, what's Bond doing?
なんということだ、ボンドはいったい何をしとるんだ!


Q: I think he's attempting re-entry, sir.
どうやら、再突入しようとしてるようです


Photo: Wikipedia


一方シャトルでは…

Dr. Goodhead: James?
ねぇ、ジェームズ


James Bond: I think it may be time to go home.
そろそろ家に戻らないと


Dr. Goodhead: Take me 'round the world one more time.
世界をもう一周させて


James Bond: Why not?
お安いご用さ


この映画が公開された2年後に初飛行したスペースシャトル。もう地球周回軌道を飛ぶことはありません。

Photo: NASA

2011/07/21 by Tate Slow
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