Archive for 2011
アルトイズ缶入り、手作りiPhoneソーラーチャージャー。
クリスマスはもともと冬至のお祭りでした。一年でいちばん暗い日。太陽がふたたび力を得て、明日から次第に日が伸びてゆくように願いを込めて、人々が祈った日です。
大地震、津波などの自然災害のみならず、社会もまた土台から揺らぎ始めた2011年。原子力発電所の大事故、独裁者たちの死、金融システムの瓦解、格差の拡大。既得権益を盾にこれまで以上に富を独占しようというわずかな人々がいる一方で、もはや市場というグリッドで役割を充てがわれなくなってしまった多くの人々は、ストリートに出てテントに住み、抗議活動を続けながら希望のない日々を送っています。私たちはこの暗い時代を乗り越えて、もう少しマシな社会をつくっていくことができるでしょうか。
そんな年の瀬ですら、富める商人たちは活気づきます。どう考えてもあまり必要でもなさそうなモノを売りつけようと、騒がしくあの手この手を弄してくるのです。テレビや新聞、ラジオで喧しく繰り返す昔ながらの方法はもちろん、今年はとくに、スパムフォローにリファラースパム、Youtubeの動画広告やUGCサイトでのステルスマーケティングなど、昨年までとはうってかわって膨大な広告費がネットに流れ込んできているように見えます。昨年末はクーポンサイトばかりがネット広告を席巻していたのが嘘のような充実ぶりです。
ただ今年は、そんな“話題の”ピカピカの新製品も、少しばかりくすんで見えるようです。
今まで薄々感じていた社会の不具合が一気に溢れ出し、あまりにも多くの人々が住む場所はおろか食べ物や飲み物ですらも儘(まま)ならなくなってしまった今年、これまでのようにただデパートの棚から選ぶのだけではなく、ちょっとだけエネルギーや大量消費について見つめ直せるような、ひと手間かけた小さな贈り物なんてどうでしょうか。といっても手編みのセーターではありません。
2011/12/24
by Tate Slow
巨大グリッドからエネルギーを解放する
極小テクノロジー。
私たちが抱える地球規模の心配事の多くは、エネルギーと電力の問題を中心としています -- いかにコントロールするのか、どうやって対価を支払っていくのか、このまま燃やしつづけて良いのか…
投資コンサルタントとしてならしていたジャスティン・ホール・ティピング氏は2000年、故郷コネティカット州ほどもある巨大な氷山B-15が南極大陸から分離したという報道に強いショックを受けました。
「これよりもっとマシなエネルギー供給方法はないものだろうか」
彼は長年ベンチャー・キャピタルで事業投資に従事してきた経験を生かし、極小スケールのエネルギーについて研究をしている大学やラボを資金援助をする投資ファンド、ナノホールディングスを設立しました。発電、送電、蓄電、資源の保全の4つの部門で、最先端の科学技術、ナノテクノロジーを応用し、根本から新しいエネルギーのあり方を探るためです。
資金的に大きなリスクを伴う事業ですが、ここから見えてきた可能性は実に驚くべきものでした。
2011/11/24
by Tate Slow
果てしない荒野へ。
全翼機と飛行船の混血航空機、ソーラーシップ。
今や世界中に空港が整備され、あらゆる国で道路網も発達しましたが、実は空港は点と点を結ぶだけ、道路は線上の移動を可能にしただけで、地球にはまだまだ到達困難な“面積”が広く残されています。こうした僻地には、まだ発見もされて無い貴重な動植物が生息していたり、戦争や開発で土地を追われた人々や、絶滅が危惧される動物たちが逃げ込んできて、ひっそり暮らしていたりします。
このような荒野や砂漠、ジャングルや湿地帯などで、医薬品や食料、患者や研究者を搬送するロジスティクスを確立するには、軍事作戦なみの大規模オペレーションを定期的に実施するか、環境破壊を伴う大規模なインフラ整備を行う必要があります。
今はまだ…
2011/11/10
by Tate Slow
聖なる森へと転生する埋葬の形、
ウッドランド・ベリアル。
Photo: Not so common sense
死をどう受け止めるか、そしてどのように埋葬するかは、文明社会が太古より抱えるの大きな課題のひとつです。
ところが科学技術が発展して生活が大きく変わったにもかかわらず、埋葬についての考え方はそれほど変わらず、法律や生活習慣の変化にアジャストしたのみでした。過剰に死を忌避する現代社会では、この分野についてはタブーといえるほど注意がはらわれてこなかったようにも思えるほどで、存在感の薄れてきた宗教とともに半ば形骸化したセレモニーとして国や地域ごとに流儀が定着し、ひとつひとつの儀式の意味をあまり考えることもなく受け入れてしまっています。そしてともするとこれほど長く変わっていないのだから、それは変わるべきでは無いものなのであって、現在の形が最適なのだという幻想すら抱きがちです。
しかし、伝統的価値観や宗教の影響力が大きく低下しているヨーロッパのふたつの国を中心に、最近新しい形の埋葬を選ぶ人たちが急速に増えてきました。
ウッドランド・ベリアル(森への埋葬)と呼ばれる、ナチュラル・ベリアル(自然葬)の一種です。
2011/10/31
by Tate Slow
雲の中でキャンプ。
ジプシー・ツェッペリン、エアロモデラーII。
コンピューター・グラフィックで美しいレンダリングを描くだけなら、昔よりずっと簡単できるようになりましたが、はたしてどうしたら90メートルにも達する、ゼロ・エミッションのバイオミミクリな飛行船をつくって、実際に飛ばすことができるでしょうか。
ひとりの若いデザイナーと、彼ににふさわしい銀行残高しかないプロジェクトの場合はとくに。
リーヴェン・スタンディアート氏の方法はシンプルでした。自分で一歩づつ進めればいい…
2011/08/12
by Tate Slow
超低空を廻る宇宙ステーション、クリケット・トレーラー。
ギャレット・フィンリー氏は子どもの頃、小さなスペース(空間)が大好きだったそうです。その理由は、歯磨きのような日々の雑事ですら、地球とダイレクトにつながっていることが実感できるから。
やがて建築家/デザイナーとなった彼はヒューストンのNASAで、国際宇宙ステーションの“居住モジュール”の設計に携わるようになります。本当のスペース建築家として経験を積むうちに、だんだんと自分でも実際に使うことができるものが欲しくなってきました。
そこで彼は、子どもたちとキャンプするのに、テントよりもちょっとだけ快適で、軽量、コンパクト、かつフレキシブルな、地球を旅するのにちょうどいい大きさの家庭用の居住モジュール、“クリケット”をデザインしたのです。
2011/08/10
by Tate Slow
支配から共生へ。
自然の緻密なデザインに倣う、森の農園。
Photo: Stevil
一見若い森に見えるこの場所は、実は農園なのです。
所有地に単一の作物だけを植え、“合理的”に工場化していく現在の農業。
100年以上も続くこの方法を改め、素直に自然の森の緻密なデザインを模倣したら、もっとずっと豊かな農地をつくれるのかもしれません。
2011/08/03
by Tate Slow
大都会に迷い込んだある生きものに届いたメッセージ。
渋滞した大都会の裏通り。小銭稼ぎにパトカーのフロントガラスを掃除しようとする少年を、警官がしかります。
「やめてくれ。昨日も言ったろう。もうストリートになんか来るんじゃない」
小遣いを渡し、不安そうな面持ちで少年の後ろ姿にため息をつく警官。そのとき彼は、雨煙の中に不審なものを目撃します…
2011/07/29
by Tate Slow
自由へ。感じるままのフリーダイビング。
It's about keeping the mind at ease, taking a deep breath and letting your self fall into the ocean.
いかに心を穏やかに保ち、深く息を吸って、海に身を任せ、ただ落ちて行けるかにかかっている。
by Tate Slow
ロケットから往復便へ。スペースシャトル最後の滑空。
Photo: NASA
2011年7月21日午前5時57分(EST)、最後のミッションを終えたスペースシャトル・アトランティス号が無事帰還しました。30年、135回におよんだフライトミッションのトリをかざる夜明け前の着陸の様子をNASAをが公開しています。この着陸風景こそ、スペースシャトルが従来のロケットと大きく違っていた点なのです。
2011年7月21日午前5時57分(EST)、最後のミッションを終えたスペースシャトル・アトランティス号が無事帰還しました。30年、135回におよんだフライトミッションのトリをかざる夜明け前の着陸の様子をNASAをが公開しています。この着陸風景こそ、スペースシャトルが従来のロケットと大きく違っていた点なのです。
2011/07/21
by Tate Slow
ジョン・ケージの“演奏しない音楽”とその演奏者たち。
Photo: NPR
ジョン・ケージ氏が1952年に作曲した曲、4'33は、4分33秒にわたって、なんの楽器も演奏しない曲です。でもそれはただの無音なのでしょうか? ローレンス・フォスター指揮、BBC交響楽団よる演奏です。
ジョン・ケージ氏が1952年に作曲した曲、4'33は、4分33秒にわたって、なんの楽器も演奏しない曲です。でもそれはただの無音なのでしょうか? ローレンス・フォスター指揮、BBC交響楽団よる演奏です。
2011/07/19
by Tate Slow
オーガニック・ミルク所持で逮捕される日。
食糧危機と遺伝子組換え食品。
2010年8月22日、カリフォルニアのヴェニスにあるオーガニック食品店に警官たちが突入しました。監視用カメラがとらえた映像には、銃を向ける警官たちの緊迫した様子がはっきりと映っています。彼らの目的は、未処理のオーガニック・ミルク、でした。
2011/07/15
by Tate Slow
五音音階のパワー。
メロディーはプリインストールされているか。
霊長類の中でヒトほど多彩に音声を使いこなす動物はいません。声帯や口腔を使った発音の膨大なバリエーションは、複雑な単語や言語を可能にしました。そして声や楽器による音の高低強弱有無をリズムと組み合わせた音楽は、知る限り世界中のあらゆる文化に必ず存在しています。そしてそれらはどちらも、ヒトとヒトのかかわりから生み出されたものです。
かかわりである以上、相手と共通のプロトコルのようなものが必要になります。言語の場合それは単語や文法、慣習で、社会文化によって醸成されるものですが、音楽の場合はなにがそれにあたるのでしょうか? そもそもなぜヒトは音楽にノルことができるのでしょう?
2011/07/01
by Tate Slow
閉じ込められたアーティストを路上に解き放て!
かつて貴族階級に独占されていた芸術を、路上に解放した現代のストリート・アーティストたち。そのひとり、TEMPT氏は、不治の奇病ALSによって全身麻痺となり、7年前から活動を停止せざるを得なくなっていました。
そのことを知ったエベリング・グループ (The Ebeling Group)というNPOの創業者、ミック・エベリング氏は、専門家でもなんでもない有志たちとともに、既成概念に拘らない自由なアイデアと行動で、彼をふたたび路上へと解き放ったのです。
2011/06/29
by Tate Slow
お客さんはカラスたちな自動販売機。
Photo: カラス用の自動販売機 - A Vending Machine for Crows
優れた知性同士なら、衝突や競争のような前時代的でプリミティブな関わり方を捨て、種族を超えて協調することもできるのかもしれません。
優れた知性同士なら、衝突や競争のような前時代的でプリミティブな関わり方を捨て、種族を超えて協調することもできるのかもしれません。
2011/06/23
by Tate Slow
不可能なんてありえない。500年ごしの処女飛行。
人力機なのにプロペラがありません。
鳥のように空を飛ぶ機械といえば、イカルスの神話以前より19世紀末にいたるまでほとんどは、羽ばたき機(オーニソプター)のことでした。
天才レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)も1485年頃に人力オーニソプターのスケッチを描いています。実際につくられることも飛ぶこともありませんでしたが、彼の無数の鳥のスケッチからは、神の創造物である自然をつぶさに観察して飛翔のメカニズムを理解しようとしていたこと、そして特に鳥の飛行方法に大きな可能性を見出していただろうことがうかがえます。
高名だが年配の科学者が可能であると言った場合、その主張はほぼ間違いない。また不可能であると言った場合には、その主張はまず間違っている。
鳥のように空を飛ぶ機械といえば、イカルスの神話以前より19世紀末にいたるまでほとんどは、羽ばたき機(オーニソプター)のことでした。
天才レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)も1485年頃に人力オーニソプターのスケッチを描いています。実際につくられることも飛ぶこともありませんでしたが、彼の無数の鳥のスケッチからは、神の創造物である自然をつぶさに観察して飛翔のメカニズムを理解しようとしていたこと、そして特に鳥の飛行方法に大きな可能性を見出していただろうことがうかがえます。
2011/03/05
by Tate Slow
自分ひとりではトースターひとつ組み立てられない。
自分ひとりではトースターひとつ組み立てられない。サンドイッチなら作れるが、それだけだ。
「ほとんど無害 (河出文庫)」ダグラス・アダムス 1992年(安原和見=訳)
有名な「銀河ヒッチハイク・ガイド」シリーズからの引用です。主人公のアーサー・デントは、ピントルトン・アルファ星の再定住支援センターで、“ろくなものを提供してくれそうもない”移住候補の惑星のファイルを眺めながら途方にくていました(お役所というのは、銀河広しといえども、どこも似たようなもののようです)。
2011/02/27
by Tate Slow